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整理解雇 ~医師のための労務 退職シリーズ第3回~

前回、解雇は、大きく普通解雇、整理解雇、懲戒解雇に分けられると説明しました。 今回は整理解雇について説明します。

■ 整理解雇とは
 「整理解雇」とは、個人開業医または医療法人(「使用者」)が経営上の必要性に基づき人員削減を行うためにする解雇です。
 整理解雇の特徴として、次の2つが挙げられます。 第1に、職員(「労働者」)側の事情に起因してなされる普通解雇および懲戒解雇とは異なり、使用者側の事情に起因してなされるということ、第2に、往々にして一度に多数の労働者が解雇対象とされ、それに伴って誰を解雇対象とするかという人選の問題が生じることです。 これらの特徴を背景として、整理解雇の実施には、判例上、労働者側の事情に起因してなされる普通解雇よりも厳しい制約が課されています。

■ 整理解雇を行うためには
 整理解雇を実施するためには、「整理解雇の4要件」を充足することが必要です。 整理解雇の4要件は、前回説明した解雇権濫用法理(労働契約法第16条)の2要件(客観的合理性および社会的相当性)を整理解雇の特徴に即して具体化したものです。 1要件ずつ詳しくみていきましょう。

①人員削減の必要性
 整理解雇を実施するためには、人員削減の必要性を備えていることが求められます。 人員削減の必要性の判断について、かつては削減しない限り倒産を免れないような事情を求めた裁判例もありました。 しかし、近年は、一定の財務状況の悪化などの経営困難が認められる場合には、ある程度使用者の経営判断を尊重する傾向があります。 もっとも、客観的な財務状況の悪化が認められない場合1や、整理解雇が行われた同年度に新規採用を行い、また、整理解雇の2か月前に翌年度の新規採用者2名を内定しているといった矛盾した行動を使用者がとっていた場合2などでは、人員削減の必要性が認められていません。

②解雇回避努力
 人員削減の必要性を備えている場合でも、出来る限り解雇を回避する努力が求められます。 具体的には、残業の削減、新規採用の停止、余剰人員の就業場所・業務の変更(「配転」)、非正規労働者の雇止め、希望退職者の募集などが挙げられます。 どこまで実施するかはケースバイケースですが、出来る限りの措置をとることが求められます。

1 ゼネラル・セミコンダクター・ジャパン事件・東京地判平成15・8・27労判865号4頁。 2 オクト事件・大阪地決平成13・7・27労経速1787号11頁。

③人選の合理性
 解雇回避努力を尽くしてもなお余剰人員が存在する場合、客観的、合理的な基準を定め、その基準を公正に適用して被解雇者を決定することが求められます。 具体的には、勤務成績(ただし、適正な勤務評価に基づくなどの客観性が必要です)や勤続年数などが挙げられます。 一方で、客観的、合理的な基準として認められないものの例として、「既婚女子社員で子供が二人以上いる者」など違法な差別にあたる基準3、「適格性の有無」など抽象的な基準4 、「幹部職員で53歳以上の者」(一般的に再就職が困難と予想される者)など被解雇者に対する配慮を欠く基準5 が挙げられます。

④手続の妥当性
 使用者は、労働者に対し、人員整理の必要性や被解雇者の選定基準の内容などについて説明を尽くすことが必要です。そのため、被解雇者に対し、解雇日の6日前になって突如として解雇を通告するような対応6 は、手続の妥当性を欠くということになります。

3 コパル事件・東京地決50・9・12時報789号17頁。 4 労働大学(本訴)事件・東京地判平成14・12・17労判846号49頁。 5 ヴァリグ日本支社事件・東京地判平成13・12・19労判817号5頁。6 あさひ保育園事件・最判昭和58・10・27労判427号63頁。

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