長年培った医療法人の資産が、将来の重い相続税負担や、突然の持分払戻請求リスクとなって経営を脅かす可能性があります。認定医療法人制度を活用した「持分なし医療法人」への移行はこれらの課題を根本から解決し、長期的な経営の安定と円滑な事業承継を実現する、賢明な選択肢のひとつです。
医療法人として長年にわたり築き上げてきた信頼と資産は、地域医療への貢献の証です。しかし、それが将来の経営を揺るがしかねない「隠れたリスク」を抱えていることをご存知でしょうか?
持分あり医療法人では、経営が順調で法人の内部留保が増加するほど出資持分の評価額が高くなります。これにより出資者が死亡した場合には、その相続時に多額の相続税が課される可能性があり、相続人が納税資金に苦慮する事態も起こりえます。
出資者が退社する際、その出資持分に応じた払戻請求をされる可能性があります。その支払い額は出資額ではなく、出資者が退社する時点での医療法人の時価純資産価額で計算されるため、純資産が増加するほど高額な払戻請求となるリスクがあります。これは法人の財政に大きな負担をかけ、最悪の場合、医業継続が困難になる事態を招く可能性も否定できません。
認定医療法人制度は、持分あり医療法人の課題に対する強力な解決策として国が推進する制度であり、活用することで税制優遇を受けながら持続可能な経営基盤を確立できます。制度やメリットを正しく理解することで、「今」行動すべき理由が見えてきます。
認定医療法人制度は、出資持分あり医療法人が出資持分なし医療法人へ移行することを促進するために、2014年度に創設された制度です。移行計画を策定し、厚生労働大臣の認定を受けることで税制上の優遇措置が適用されます。認定を受けるには厳格な要件があり、さらに移行後6年間は要件を維持する義務があります。
この制度の最大のメリットは、移行プロセスにおける税制上の優遇措置と、それに伴う経営の安定化です。具体的には以下の4つのような点が挙げられます。
出資者が持分を放棄した場合、通常医療法人に課される多額の贈与税が非課税となります。また、相続が発生した場合は、相続人が出資持分を放棄すればその持分に対する相続税が免除されます。これにより、後継者は出資持分取得のための資金が不要となり、事業承継の大きな障壁が取り除かれます。
持分なし医療法人へ移行することで、出資者からの高額な持分払戻請求リスクが実質的に解消され、法人の財政が安定します。
後継者が多額の資金を投じることなく事業を引き継ぐことが可能となり、スムーズな世代交代を図ることができます 。これらは法人の永続的な経営、特に同族経営を維持していく上で極めて重要な要素となります 。
認定医療法人制度を活用する上で、出資者や相続人からの払い戻し請求に対応するための自己資金が不足する場合、独立行政法人福祉医療機構から融資を受けることができる優遇措置があります。融資限度額は2億5千万円、償還期間は8年(うち据置期間1年以内)です。
認定医療法人制度の活用は多大なメリットをもたらしますが、その過程には複雑な要件や、関係者間の合意形成などの障壁が存在します。それぞれの医療法人が抱える具体的な懸念に対し、本郷メディカルソリューションズは高い専門知識と経験で徹底的にサポートします。
私たちは、日本最大級の税理士法人グループの一員です 。この強力なバックグラウンドにより、医療法人特有の複雑な税務問題、法務上の課題、そして経営戦略まで、各分野の専門家がシームレスに連携し、高水準の専門知識と精度で対応します。一般的なコンサルティングファームや小規模な税理士事務所では提供できない、比類なき専門性の深さが私たちの最大の強みです。
多くの企業が「ワンストップ」を謳う中で、私たちは税務、法務、経営の専門家がグループ内で連携し、一貫したサービスを提供できる点が最大の強みです。事前の検討・準備から、認定要件の検討、移行計画の申請、持分なし医療法人への移行手続き、そして移行後6年間にわたる運営状況の報告義務まで 、すべての複雑な側面を漏れなく、かつ高精度でサポートします。複数の外部アドバイザーを調整する手間を省き、本来の業務である医療の仕事に集中できる環境を得られます。
私たちは単なる税負担の軽減だけでなく、医療法人の永続的な安定、地域医療への貢献、そして創業者の築き上げたレガシーを次世代へと円滑に継承するという、より高次の価値提案を行います。それぞれの医療法人の理念と合致する形で、社会的な責任を果たし、未来へつなぐ経営を支援します。
それぞれの医療法人の状況に合わせ、最適なプロセスでサポートいたします。
認定医療法人を活用し、医業承継に成功した事例をご紹介します。
条件1
医療法人の出資持分を持つ出資者(理事長)に相続が発生
条件2
出資持分の評価額(前提条件 税務上の大会社)
① 類似業種比準価額:10億円(相続時に使用する評価額)
② 時価純資産価額:20億円
条件3
相続対象財産は14億円
内訳:出資持分10億円・現金4億円
長男で医師の新理事長が出資持分10億円と現金4億円を相続した。しかし、相続税が6.8億円となるため、持分を放棄して持分なし医療法人へ移行をすることを決め、相続税の申告期限までに認定医療法人の認定を受けることができた。結果、6.8億円の相続税が2.2億円に減額され、医療法人も問題なく継承することができた。
※相続税は、相続発生時にあった出資持分の10億円も含まれた税率で計算されることに注意が必要。
【追加条件】
① 法定相続人は医師の長男1人
② 相続発生後10か月以内に認定医療法人認可
③ 認定医療法人認可前の相続税は6.8億円
長男で医師の新理事長が現金4億円を相続した。既に認定医療法人を活用し、持分なし医療法人へ移行済みのため、出資持分10億円の相続はなし。結果、相続税が1.4億円と他のケースに比べて最も低く、医療法人の運営も安定している。
※相続税は相続発生後とは異なり、現金4億円のみで計算されるため、税率も低くなる。
【追加条件】
① 法定相続人は医師の長男1人
② 相続は4億円の現金のみ
③ 出資持分の10億円はない
持分なし医療法人への移行は、医療法人の任意の選択によるものであり強制されるものではありません。また、持分なし医療法人への移行にあたって、必ずしも認定制医療法人度を利用しなければならないものでもありません。事前のご相談で状況をお伺いした上で、一般の持分なし医療法人への移行や、持分あり医療法人のまま今後も出資持分対策を実施するという選択肢をご提案するケースもございます。経験・実績豊富な私たちが実情に合わせたサポートをさせていただきます。
コンサルティングを開始してから厚生労働省の移行計画認定を受けるまでの期間は、半年~1年程度が平均的です。ただしそれぞれの医療法人の状況によって差があり、事前準備や出資者間の合意形成などに時間を要するケースもあるため、余裕を持った計画が重要です。
費用は、貴法人の規模、出資者の数、財務状況、移行計画の複雑さなどによって異なります。無料相談時に詳細なヒアリングを行い、それぞれの医療法人の状況に合わせた最適な計画とともにお見積もりをご提示いたします。
認定要件には、特別利益供与の禁止、役員報酬の適正性、遊休財産の制限、社会保険診療収入割合など、厳格な基準があります 。しかし、過去に該当する取引があった場合でも、申請時点で解消されていれば認定が可能な場合もあります 。私たちは現状を詳細に分析し、これらの要件を確実にクリアするための具体的な改善策を提案し、実行まで全面的にサポートいたします。
はい、可能です。認定医療法人制度は、役員等の親族割合要件はないため、認定要件を満たせば社員構成は現状を維持しつつ、同族経営を継続したまま税制上の優遇措置を受けて移行することが可能です。医療法人の理念や経営方針を尊重し、最適なスキームを構築します。
このような懸念は、持分なし医療法人への移行を検討される方々からよくお聞きしますが、これは誤解です。「財産が国のものになる」という懸念は、持分なし医療法人の場合「法人の解散時に残余財産が国に帰属する可能性がある」という点から生ずるものと考えられます。しかし、役職退職金の活用など適切な対策を講じることで実質的な「財産の喪失」にはならない場合がほとんどです。ご懸念をお持ちでしたら専門家に相談し、自院の状況に合わせた具体的なシミュレーションや対策を検討することをお勧めします。