令和7年度税制改正解説 「103万円の壁の見直しと 特定親族特別控除(仮称)の創設」

公開日: 2025年03月06日

令和6年12月20日に令和7年度税制改正大綱が公表されました。今回の改正では、昨今の物価上昇や深刻な労働力不足といった現状を踏まえ、所得の増加という形で豊かさを実感できるような所得税の負担軽減、生産性の向上につながるような法人税の見直しなどが盛り込まれました。

今回のTH Picks では、所得税の改正ポイントのうち、皆様にも身近な2つのテーマを取り上げて解説します。

執筆日(令和7年2月下旬)時点ではまだ「年収の壁」について議論が続いていますが、既出の税制改正大綱の内容に沿ってご案内することをご了承ください。

1.所得税の基礎控除及び給与所得控除(103万円の壁)の見直しについて

1.103万円の壁について(現行制度)

現行制度では、合計所得金額(給与所得や事業所得など各種所得の合計金額(純損失または雑損失等の繰越控除を適用する前の金額))が2,400万円以下の納税者は48万円の基礎控除額があるとともに、給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額)が162万5千円以下の納税者は55万円の給与所得控除額があります。
つまり、現行制度では基礎控除額の48万円と給与所得控除額の55万円を合わせた103万円までの給与収入につきましては所得税が発生しないこととなっています。

2.基礎控除額48万円の見直し

所得税の基礎控除額を現行の48万円から58万円に10万円、約20%程度の引き上げが大綱に盛り込まれました。約20%の引き上げとしたのは、最後に基礎控除額の引き上げが行われた平成7年から令和5年にかけて消費者物価指数が約20%程度上昇していることが背景にあります。

合計所得金額 現行制度 改正案
2,350万円以下 48万円 58万円
2,350万円超
2,400万円以下
48万円 48万円
2,400万円超
2,450万円以下
32万円 32万円
2,450万円超
2,500万円以下
16万円 16万円

 

3.給与所得控除額の見直し

納与所得控除額については現行の最低保障額55万円から65万円に引き上げが大綱に盛り込まれました。

4.改正案による効果

基礎控除額及び給与所得控除額がこの通り引き上げられると、103万円の控除額が基礎控除額58万円+給与所得控除額65万円=合計123万円になります。

年収 現行制度 改正案 年間減税額
150万円 2万3,500円 1万3,500円 1万円
300万円 7万7,000円 7万2,000円 5千円
450万円 17万500円 16万500円 1万円
600万円 34万8,500円 32万8,500円 2万円
800万円 69万6,500円 67万6,500円 2万円
1,000万円 110万5,100円 108万2,100円 2万3,000円

※給与所得控除、基礎控除以外の条件は考慮しておりません。

 

5.実務上の留意点

地方税である個人住民税の給与所得控除の最低保障額も同様の引き上げが予定されていますが、基礎控除額は43万円のまま据え置きとなります。

6.適用時期

所得税は令和7年分以後、個人住民税については令和8年度分以後適用されます。

2.特定親族特別控除(仮称)の創設

1.制度の概要

19歳から22歳までの大学生年代の子等※1 を扶養している場合、その親は特定扶養控除が受けられます。従来は、特定扶養控除の基準として合計所得金額※2 48万円(給与収入103万円)とされていましたが、今回の税制改正により、合計所得金額85万円(給与収入150万円)まで同等の控除を受けられる「特定親族特別控除(仮称)」が創設される見込みです。

※1 納税者が生計を一にする年齢19〜23歳未満の親族等(居住者の配偶者及び青色事業専従者を除くものとし、合計所得金額が123万円以下であるもの)で控除対象扶養親族に該当しない者を指す。
※2 給与収入から給与所得控除を差し引いた額

2.制度の内容

現行制度では、下記の表のように基準とされる大学生世代の子等の合計所得金額が48万円(給与収入103万円)を超えているか否かで、納税者が特定扶養控除適用の対象かどうかを判定していました。

現行制度
親族等の合計所得金額 控除額
48万円以下 63万円
48万円超 0円

改正案の「特定親族特別控除(仮称)」では、基準とされる大学生世代の子等の合計所得金額が48万円から85万円まで引き上げられているとともに、85万円を超えた場合でも控除額を段階的減らす仕組みを導入し、世帯収入が増えても手取りが減ることの無いようになります。

改正案
親族等の合計所得金額 控除額
58万円超 85万円以下 63万円
85万円超 90万円以下 61万円
90万円超 95万円以下 51万円
95万円超 100万円以下 41万円
100万円超 105万円以下 31万円
105万円超 110万円以下 21万円
110万円超 115万円以下 11万円
115万円超 120万円以下 6万円
120万円超 123万円以下 3万円

 

3.改正案による効果

前提条件
〇 夫…………………………給与収入 600万円
〇 妻…………………………専業主婦
〇 大学生世代の子等………給与収入 150万円

現行制度 改正案
〇 配偶者控除38万円
〇 基礎控除48万円
〇 配偶者控除38万円
〇 基礎控除58万円
〇 特定親族特別控除63万円
所得税額 272,500円 所得税額 189,500円
年間減税額  83,000

※復興特別所得税は含まれておりません。
※前提条件以外の条件等は考慮しておりません。
※個人住民税についても、同様に段階的に控除額が設定されます。

4.適用時期

所得税は令和7年分以後、個人住民税については令和8年度分以後適用されます。

本資料は令和6年12月20日現在の税制及び公表資料に基づいて作成しております。また内容につきましては、情報の提供を目的として一般的な法律・税務上の取り扱いを記載しております。この為、諸条件により本資料の内容とは異なる取り扱いがなされる場合がありますのでご留意ください。

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