2024年 確定申告に向けて確認したい節税対策

公開日: 2024年11月12日

医療関係者のための医業経営情情報

2024年も早いもので残すところ2ヶ月となりました。そこで今回は、年末までに確認しておきたい節税対策について説明します。使用できる制度をしっかりと活用して、確定申告の準備をしましょう。

個人事業主向け

01. 賃上げ促進税制

「賃上げ促進税制」とは、企業が従業員の給与を前年と比較して一定以上増加させた場合、その一部を所得税から控除できる制度です。特に今年は、6月の診療報酬改定に伴い創設されたベースアップ評価料に関する加算を原資とした給与・賞与の増額分についても制度の対象となるので該当する診療所も多くなるかと思います。制度の主なポイントは以下の通りとなります。

令和6年3月31日までに事業年度が開始の場合(令和6年分)
① 前年よりも従業員への給与総額が1.5%以上増加した場合 ・・・ 増加差額の15%
② 前年よりも従業員への給与総額が2.5%以上増加した場合 ・・・ +15%上乗せ
③ 前年よりも従業員向け教育訓練費(研修費・セミナー等)を10%以上増加した場合 ・・・ +10%上乗せ

①から③を全て満たすと最大で増加差額の40%の税額控除が受けられます。制度要件を満たすための事務負担や賃上げによる将来への影響も考慮して適用可能性を検討する必要があり、慎重なシミュレーションが求められます。ただし親族への給与は含まれない、給与に充てる助成金などは控除するといったことにご注意ください。

 

02. 経営セーフティ共済

「経営セーフティ共済」は、取引先の倒産で中小企業が連鎖倒産とならないよう、万が一に備える制度です。担保と保証人なしで掛け金の10倍まで借り入れが可能で、解約時に解約手当金が受け取れます。月々の掛金は5千円~ 20万円まで自由に決められて、掛金は経費に計上することが可能です。掛金は40カ月以上納付していればその全額が戻ってきます。

ただし、解約して受け取った共済金は収入になるため、解約のタイミングを見定める必要があります。なお、令和6年10月1日以降は、既存契約を解除し、再度共済契約を締結した場合、その解除の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金は、必要経費または損金の額に算入することができません。

 

03. 小規模企業共済制度

「小規模企業共済」とは、個人事業主や会社経営者が退職金の代わりに活用できる共済保険です。掛金は月額1千円から7万円の範囲で自由に設定でき、年額の前納も可能です。掛金の全額が所得控除の対象となるため、所得税率45%に該当される方が、年額84万円を掛けた場合には、84万円×45%=約38万円の所得税の節税効果が見込めます。

ただし、医療法人化により医療法人(直接営利を目的としない法人)の役員等となった場合には、制度の継続が出来なくなります。加入期間が半年未満となる場合には、掛金の全額が掛け捨てとなりますので、ご注意ください。

 

個人事業主・理事長(給与所得者)向け

04. iDeCoを利用する

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後の資産形成を目的としてお金を積み立てる私的年金で、掛金の運用商品を自身で選択できる制度です。掛金(個人事業主:月額6.8万円、企業年金がない給与所得者:月額2.3万円)は所得控除の対象になり、所得税・住民税が軽減されます。また通常、金融商品を運用すると、運用益に課税されますが(源泉分離課税20.315%)、「iDeCo」なら非課税で再投資されます。

 

05. ふるさと納税を活用する

ふるさと納税は、自身が応援したいと思った自治体に寄附をする制度のことです。ふるさと納税をすると、2千円の自己負担金を差し引いた金額のうち上限額までが、所得税の所得控除や住民税の税額控除となります。ふるさと納税は、任意で地方自治体に寄附する制度であるため、実際に納める金額を減らす「節税」や「免税」を目指すものではありませんが、寄附金の金額に応じて自治体から返礼品をもらえるという利点があります。

他方で、ふるさと納税の謝礼として供与された返礼品に係る経済的利益は、個人が返礼品を実際に受け取った年分の一時所得として収入を計上することになります。一時所得の特別控除額は最高50万円とされていますので、その年中の他の一時所得も含めた一時所得の収入金額の合計額が50万円を超える場合には課税対象となりますのでご注意下さい。

 

今回は、年末までに確認しておきたい確定申告の制度について5つ説明いたしました。特に今年に関しましては、ベースアップ評価料の届出を提出された診療所は、賃上げ税制の対象となる可能性が高くなります。あと少しで要件を満たせる場合は、無理のない範囲で年度末に手当として従業員へ支給して頂くこともご検討ください。従業員の皆様も喜んでいただけることでしょう。今回説明した制度の活用は、資金繰りや経営状況を加味して行う必要があります。顧問税理士等の専門家へご相談の上、慎重にご判断下さい。

 

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