
近年、歯科医院の人員構成の中で「事務長」の存在がみられるようになりました。前回THPicks5月号vol.5で、事務長の業務について解説しました。事務長を採用し安定した歯科医院経営を行っていくために、どのような人材を探したらよいでしょうか。 今回は、事務長に必要なスキルとバックグラウンド別の注意点を解説します。
| 1.数字に強く(簿記力)文章が書ける
2.レセプト業務ができる、もしくは理解している 3.ITが得意 4.交渉ができる 5.几帳面で誠実 6.報連相がしっかりできる 7.ミーティング運営と明確な発言ができる |
特に大事なスキルはレセプトを理解している事です。事務長業務の成功を左右する要因となります。ほとんどの歯科医院は保険診療機関ですから、保険診療を理解していなければ、院長や歯科衛生士とも話ができません。
院内で院長やスタッフと信頼関係を築き院長の経営サポートをしていただくためにも、事務長にはまず保険診療の事をしっかり勉強してもらう必要があります。また昨今の働き方改革における育休取得に関する助成金や、DX化に関する補助金などの申請の資料作りは、現場にいる事務長ならではの業務と言えます。
しかしながら、事務長になる人材を選ぶのはなかなか難しいことです。事務長候補の方の属性や職歴等によってそれぞれ良い面とリスクがあると思います。
| バックグラウンド | メリット | デメリットまたは追加取得スキル |
| 院長の奥様、子供、兄弟、 親戚 | すでに院長の信頼は得られているので現金を扱う業務を含め任せやすい | スタッフとの関係性を築くうえで身内ならではの難しさがある |
| 元歯科メーカーおよび ディーラーの社員 | 歯科業務全般を理解しており、設備購入時の折衝などがメリット | レセプト業務、経理業務、労務管理等のスキルの習得が必要 |
| 元会計事務所の職員 | 財務、経理業務に精通していて経営予測など経営コンサルが出来ることが最大のメリット | 歯科業界や材料・設備全般の把握、労務管理など多くのスキル習得が必要 |
| 従業員の中からの起用 | 院内での信頼関係が築けていて、なおかつレセプトや歯科医院業務を活かしスムーズに仕事を任せられる | 責任者になるためのスキルを新しく習得する必要があり、長く務めてもら うためにも、今後勤務可能年数の確認が必要 |
上記の他に共通して言えることは、歯科事務長になるために足りていないスキルを時間をかけて習得してもらう必要があることです。また、特に金銭を扱うに足る信頼性が必須になります。 日々の窓口収入現金の銀行入金や通帳管理をしてもらい買掛金などの支払いをしてもらう事になりますので、院長としては万が一にも不正の起きづらい工夫が必要になります。
事務長の業務として売上管理もとても重要です。 院長が日常的に把握しきれない売上や経費について事務長にしっかり把握してもらい、定期的にフィードバックしてもらうことで日々の診療に集中出来ます。
業績向上のための中長期な戦略を一緒に相談できる存在になります。実績を重ねて信頼を勝ち取れば一般企業の専務的役割になり、最終的には院長の良き相談相手、院長の「意思決定」を導く存在になります。 今まで院長がひとりで決めていたことをふたりで決められるようになることは、院長にとってどんなに心強いことでしょう。
このような診療以外の業務 をコンサル会社にアウトソーシングするのとは明らかに違うと思います。歯科医院にとって、事務長を人選、採用することは、とてもハードルが高いですが、育成できれば医療法人や大規模歯科医院にとって価値のある人材になります。
院長が本来の歯科医師としての診療に専念することは経営の安定につながります。 さらに自院の将来性を創造するために「院長の右腕」になり得る歯科事務長を探してみませんか。
歯科医院における事務長の役割
労務管理、経営戦略、DX化など、歯科クリニックの事務長が担当する業務内容や求められる役割についてまとめました。
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