認定医療法人制度活用

医療法人健佑会 いちはら病院

茨城県つくば市を中心に「医療」「介護」「福祉」のトータルサービスを提供するいちはらメディカルグループ。2024年6月、グループの中核を担う医療法人健佑会の理事長に市原 琢己先生が就任されました。前理事長であるお父様から承継されるにあたって同法人が選択したのは、「認定医療法人制度」を活用した持分なし医療法人への移行です。将来に備えて先手を打った経営判断は、結果的に相続リスクの解消だけでなく、今後の発展につながる大きな一歩となりました。次世代の若きリーダーとして病院を牽引する市原先生に、持分なし医療法人への移行を決断された背景や、その後の取り組みについてお話を伺いました。

理事長 市原 琢己先生
DATA
医療機関名 医療法人健佑会 いちはら病院
所在地 茨城県つくば市大曽根3681
病床数 199床(急性期85床 回復期114床)
URL https://ichihara-hospital.or.jp/

はじめに、前理事長先生から法人を引き継ぐにあたって認定医療法人制度の活用を検討されたきっかけについてお聞かせください。

私は筑波大学附属病院のローテーションで研修をしていたのですが、今から3年ほど前に、当法人のいちはら病院に本格的に戻ってきました。その頃から、税務顧問である辻・本郷 税理士法人の月次報告に毎月参加するようになったのですが、そこで初めて、持分あり医療法人のままでは将来的に多額の相続税負担が生じ、承継に深刻な影響を及ぼす可能性があることを認識するようになりました。相続税の額を試算した際、「人生何回やり直しても払いきれないのでは…」と思うほどの危機感を持ったのを覚えています。それと同時に、そのリスクを回避する方法として「認定医療法人制度」があることを教えていただき、それが制度活用を具体的に検討するきっかけとなりました。

 

その後、認定医療法人制度の活用を決断されましたが、決め手となった理由を教えてください。

税負担を回避したうえで持分なしへ移行する方法として、認定医療法人制度が最も自分たちに合っていると感じました。持分なしへの移行は他の方法もあると思いますが、例えば社会医療法人への移行の場合、同族関係者の比率を3分の1以下にする必要がありますよね。同族経営を継続したい想いがあったので、その部分が懸念点になりました。認定医療法人制度であれば、同族経営を維持しながら相続税の問題を解消することができますので、この点が一番の決め手になりました。私個人としても、財産を個人に残しておいても税務上のメリットは乏しいと考えています。むしろ、この地域での医療を将来にわたって継続するためには、法人に資産を残し経営基盤を安定させることが重要だと考えました。

 

持分なしへ移行するタイミングについては、どのように決められましたか。

父もまだまだ元気にしておりますし、理事長を続けたいという思いもあったと思います。ただ、認定医療法人制度の活用には期限があります。今は期限が延長になっていますが、いずれにせよ確実に制度が利用できるうちに移行しておいた方が安心だと考え、早めに取り組むことを選択しました。このまま何もしなければ将来的に多額の相続税が発生し、病院の存続すら危うくなるリスクがある、それを避けるための決断でした。結果的に、自分が思い描いていたよりも早いタイミングでのバトンタッチとなりましたが、その分、相続税の不安が早期に解消され、安心して法人経営に専念できるようになったことは大きな収穫だと感じています。

 

移行プロセスにおいて、不安や大変だと感じられたことはありますか?

正直なところ、ほとんど不安はありませんでした。法人のスタッフもしっかりしたメンバーが揃っているので、皆で協力的に進めることができたと思います。制度活用を支援してくださった本郷メディカルのコンサルタントの方からも、どの段階で何をすべきかという詳細なスケジュールを提示していただき、しっかり筋道を立ててサポートしていただいたので本当に助かりました。もちろん、プロセスの中でクリアしなければならない課題や整理すべきことは当然あったのですが、それはどの法人でも同じだと思います。むしろ、認定医療法人制度を活用することによって、従来の課題をひとつひとつ整理する良い機会になったと感じています。最終的には法人全体の体制がすっきりと整い、将来に向けてより明確な姿になったのは大きなプラスだったと思います。

 

移行が完了し、改めて感じているメリットについて教えてください。

将来の相続リスクを心配することなく、法人運営を続けられるという安心感が得られたことが一番ですね。そうした心配から解放されたことで、今はシンプルに法人の経営そのものに力を注ぐことができています。コスト管理や人材確保など、日々の経営課題に集中できるのは大きな変化です。結果として、医療を通じて地域にどのような貢献ができるのかという、本来の目的により注力できるようになったと感じています。

 

本業である医業経営に集中できるようになった今、特に力を入れている経営戦略や具体的な取り組みについて教えてください。

私が今意識していることのひとつはコスト管理です。これは父からも「自分の家を建てるつもりで業者と交渉しなさい」と常々言われてきたのですが、その教えを今も大切にしています。具体的には、漫然と使用していた高額な医療材料の使い方を見直したり、職員にも、業者から必ず相見積もりを取ったり、価格交渉を徹底するよう伝えています。そうした日々の積み重ねが、結果的に材料費や施設改修費、その他経費などの削減につながり、大きな成果を生み出すことができました。私だけでなく、組織全体に数字への意識を根づかせることが大切だと思っているので、自ら工夫してコスト削減に取り組む職員は、しっかり評価に反映させる仕組みにしています。

一方で、人材の確保と育成も大きなテーマです。現在は、紹介会社に頼らず自力での採用に注力をしています。SNSの活用や、YouTubeで施設紹介の動画コンテンツを展開するなど、より多くの方の目に触れる機会をつくるとともに、コストを抑えつつ効果的なPR活動を強化しています。さらに、学生へのアプローチとして看護部や医事課には積極的に学校へ出向いてもらい、実習生を受け入れる体制を拡充しました。その結果、紹介会社に依存せずとも新入職員を確保できるようになり、長期的に人材を安定して確保するための土台づくりが進んでいると感じています。こうした取り組みも、持分なしへの移行によって将来の不安材料がなくなったからこそ、腰を据えて取り組めている部分も大きいです。経営基盤が安定したことで本業にしっかり集中できるようになったと思います。

2026年、敷地内に介護医療院を開設予定

 

最後に、今後の法人の展望についてお聞かせください。

2026年に、つくば市で初となる介護医療院を開設する予定です。直近の目標としては、この新しい施設を早期に軌道に乗せることができるよう、最大限の努力を注いでいきたいと考えています。当院は整形外科を中心に、脳神経内科領域も含めたリハビリテーションに力を入れており、高齢社会となっている地域の医療ニーズに非常にマッチしていると感じています。今後もこのニーズに安定的に応えることができるよう、手術件数や入院患者数の増加を目指し、救急搬送の受け入れ体制を整えるほか、近隣病院からの転院受け入れや地域のクリニックとの連携をさらに強化していきたいと考えています。

長期的な展望としては、事業の拡大というよりもまずは、現在の法人運営に関して強固な基盤を築くことを最重要視しています。最終的には、理事長である私が不在の時でも、安定した運営が可能となるような組織体制をつくることが理想です。つくば市は人口が堅調に増加しており、近年では全国トップクラスの増加率です。そんなつくば市でも、いずれ減少に転じていくことは避けられません。地域に必要とされる法人であり続けるため、今から確かな経営基盤を整えていくことが重要だと考えています。

 

インタビューを終えて…

市原先生への取材を通じて強く感じたのは、課題を先送りにせず早めに把握した上で、着実に対応を進めてこられた姿勢です。承継や相続といったテーマは往々にして後回しにされがちですが、制度の期限を踏まえ、早いタイミングで持分なしへの移行を実現されたことは、今後の法人運営に大きな安定をもたらす経営判断であったと感じます。

さらに、若くして理事長に就任され、地域医療の担い手としてリーダーシップを発揮されている姿も非常に印象的でした。そのエネルギーと実行力が法人全体に活力を与えていることは間違いありません。私たち辻・本郷グループとしても、引き続き良きパートナーとして伴走しながら、法人のさらなる発展をお手伝いできればと考えております。

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