
令和7年12月19日に「令和8年度税制改正大綱」が政府与党より公表されました。今回の税制改正においても、医療法人や個人に関する改正項目が多岐にわたり盛り込まれております。本コラムでは、医業承継や医療経営の観点から、医師の皆様や医療経営に携わる皆様にとって特に注目すべき改正論点を税目ごとに各1つずつ、3回にわたってご紹介させていただきます。第1回は資産税・認定医療法人制度に関するトピックスです。
本制度の対象は、「持分の定めのある医療法人」です 。本制度を利用し、厚生労働大臣から移行計画について認定を受けることにより、税負担なく「持分あり医療法人」から「持分なし医療法人」へ移行することができます。
「持分あり医療法人」における最大の懸念は、出資者の死亡や持分の贈与に伴って発生する多額の相続税・贈与税です 。これが重荷となって病院やクリニックの資金が底をつけば、地域医療が立ち行かなくなるリスクがあります。国はこの「税負担による医業中断」を防ぎ、より非営利性の高い「持分なし医療法人」へのスムーズな移行を促すために本制度を設けています 。
次の相続税・贈与税の納税が猶予・免除されます。
1. 出資者の持分を相続により取得したときに、相続人に課される相続税
2. 出資者が持分を放棄したことにより、他の出資者の持分が増加することで贈与を受けたものとして他の出資者に課されるみなし贈与税
3. 持分あり医療法人の出資者全員が持分を放棄したことにより、経済的利益を受けたものとして医療法人に課されるみなし贈与税
令和8年度税制改正により、適用期限がこれまでの令和8年12月31日から3年間延長され、「令和11年12月31日」までとなりました 。移行計画を練るための「猶予」が与えられた形です。
インバウンド需要の高まりを背景に、認定要件の一部が現実的なものに見直されました 。具体的には、訪日外国人に対する自由診療の診療費上限が緩和されます 。これにより、国際的な医療サービスを提供している医療機関においても、認定を受けやすくなります。
認定医療法人制度を活用して、後継者の問題や、重い税負担の懸念を払拭しつつ、将来にわたる安定的な医業経営を目指してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
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大谷 朋子 本郷メディカルソリューションズ株式会社 税理士/行政書士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士 大手金融機関、税理士事務所勤務を経て、辻󠄀・本郷税理士法人に入所。医療機関の税務顧問を中心に、相続対策や医業承継業務など幅広く従事。現在、本郷メディカルソリューションズ株式会社においても、持分なし医療法人への移行支援業務をはじめ、医療法人設立、M&A事業等に参画している。 |