2025年分の確定申告で活用したい「賃上げ促進税制」

公開日: 2025年11月19日

年末も近づき、確定申告の準備を始める時期ですね。様々な優遇税制がありますが、今回のコラムでは「賃上げ促進税制」をピックアップ。その中でも、上乗せ要件である「教育訓練費」について4つのポイントを分かりやすく解説します。

 

「賃上げ促進税制」とは?

「賃上げ促進税制」とは、事業者が従業員の賃金を前年と比較して一定割合以上引き上げた場合に、法人税や所得税の一部を税額控除できる税制上の優遇制度です。企業規模によって適用要件や控除率は異なりますが、一般的なクリニックが該当する中小企業の要件は以下となります。

要件 控除率 条件
必須要件 15% 給与支給総額を前年度より1.5%以上増やすことで、15%の控除が適用されます。
上乗せ要件1 +15% 更なる値上げ
給料支給総額を2.5%以上に引き上げると、さらに15%が上乗せされます。
上乗せ要件2 +10% 従業員育成
教育訓練費を前年度比 5%以上増やし、所定の要件を満たすと10%が上乗せされます。
上乗せ要件3 +5% 働きやすさ認定
「くるみん・えるぼし認定」を取得すると、さらに5%の上乗せが可能になります。

必須要件以外に取り組みやすいものが、上乗せ要件2の教育訓練費です。

 

上乗せ要件2の対象となる「教育訓練費」4つのポイント

上乗せ要件の教育訓練費の対象となるのは、国内で雇っている従業員の仕事に必要な知識や技術を身につけさせる・高めさせるために「直接かかった費用」です。

1. 対象となる従業員は?

クリニックで働いている正社員やパート・アルバイトの国内雇用者が対象です。院長先生(個人事業主)、配偶者や親族(同族関係者)、法人の役員、入社前の内定者などは対象外となります。

2. どんな研修・勉強が対象になるか?

以下のように「従業員の職務に関連性があること」が大切です。

■ 外部研修の受講料(例:医療事務スキルアップセミナー、患者様対応研修、接遇マナー研修、経営・労務に関するセミナー)
■ OJT指導の費用(例:外部の専門家を招き、院内で技術指導をしてもらった際の謝金)
■ eラーニング(例:職務関連のオンライン学習サービスや教材の利用料)

3. 対象とならない費用(線引きにご注意!)

「教育・研修そのものに直接かかった費用」だけが対象となるため、以下の「付随費用」や「間接的な費用」は対象外です。

■ 研修を受けるための移動や滞在にかかる費用(例:旅費、交通費、宿泊費、食費)
■ 従業員の給与(例:研修を受けている間の給料や日当)
■ 施設維持や運営にかかる費用(例:クリニックの会議室の使用料、光熱費)
■ 福利厚生や親睦目的の費用(例:運動会、忘年会、レクリエーション要素の強い研修)

※宿泊費や食事代込みの研修は、請求書などで「研修受講料:〇〇円」「宿泊費:〇〇円」のように内訳がはっきり分かれていない場合は、全額が対象外となる可能性があります。

4. 証拠書類(証憑)の整備が不可欠です

税額控除を受けるためには、「いつ、誰に、何を、いくら払ったか」を証明する書類が必要です。税務調査などで否認されないよう、以下の4つの情報を記載した「教育訓練費の明細書」を作成し、領収書などと一緒に必ず保管してください。

1. 実施時期(年月)
2. 実施内容(テーマや内容)
3. 受講者(氏名など)
4. 支払証明(領収書のコピーなど。支払日、金額、相手先を明記)

 

賃上げ促進税制の活用検討を!

令和6年度税制改正により、中小企業は税額控除の繰越(最大5年間)が可能になりました。これにより、たとえ今年度が赤字で税額控除が適用できなくても、賃上げが無駄になることなく、将来黒字になったときに税額控除が可能となります。

今年の賃上げが将来の節税につながる可能性があるため、ぜひ本税制の活用をご検討ください。もし「あと少しで要件を満たせそう」という状況であれば、無理のない範囲で、年末までに従業員への手当支給や業務に関連する研修の実施などを検討されることをおすすめします。

今回は賃上げ促進税制についてご紹介しました。税制の具体的な活用方法や節税額については、顧問税理士にご相談ください。当社でも教育訓練費の対象となる接遇研修のご紹介が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

 

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