2021.2.4 コラムを開始しました。【第1回】認定医療法人制度を活用した持分なし医療法人への移行 メリットとデメリット                     




▶はじめに                                     

 

 持分の定めのない医療法人への移行計画認定制度(以下、「認定医療法人制度」)は、平成26年10月の制度開始から既に6年以上が経過し、その間、個人だけでなく医療法人にも贈与税の非課税範囲が拡大される等、より使い勝手の良い制度として形を変え、実務においてもかなり浸透してきているのを実感しております。

 認定医療法人制度は令和2年9月末で一旦期限を迎えストップしており、令和2年度の税制改正で租税特別措置法上令和5年9月末まで延長されました。2021年2月現在、医療法においても延長すべく今国会で成立予定ということで審議されており、成立すれば再スタートを切ることになります。

 なお、弊社に相談頂いた持分あり医療法人のお客様には、延長されることを前提に準備を進めて頂いております。基本的に、認定医療法人制度が途切れている現在においても実際に相続等が発生し、再開までの空白期間に申告期限が来てしまう等の事情が無い限り特段支障はないため、制度が中断されているからと言って準備作業を中断する必要性は全くありません。ここで、認定医療法人制度を活用して持分なし医療法人へ移行するということについて、改めて考えてみたいと思います。



▶認定医療法人制度を活用した持分なし医療法人への移行のメリット          


 通常、贈与税等の税負担無く持分なし医療法人へ移行するためには、いわゆる非同族要件を充たす必要があります(詳細は割愛しますが、従来の特定医療法人、社会医療法人、相続税法施行令第33条第3項の要件を充たす法人については、理事等の役員について同族を3分の1以下にする必要があります。特定医療法人及び社会医療法人については、さらに社団医療法人の最高意思決定機関である社員総会の構成員、社員も同族を3分の1以下にする必要があります)。

 つまり、支配権を有する社員総会、経営権を有する理事会の過半数を同族以外で占めることになるため、他人に医療法人を乗っ取られるリスクが生じることになります。

この点、認定医療法人制度においては非同族要件が要求されていません。したがって持分なし医療法人への移行時、また移行後も途切れることなく同族で支配出来るため、乗っ取りの危険性なく同族経営を続けることが可能になります。

 そもそも認定医療法人制度を利用するしないにかかわらず、持分なし医療法人の「持分」という概念の無い医療法人へ移行することによって、いくら医療法人に利益を蓄積したとしても、それにより相続税が増えるといった問題は永久に生じません。ある意味、相続税のかからない箱に財産を一旦預けておき、同族経営ですので、いつでもある程度自由に財産を引き出すことが可能ということになります(もちろん役員報酬等で引き出す際には所得税等の別の税金が課せられますが、上手にコントロールすれば、玄孫の代まで食うに困らないようにすることも可能でしょう)。

 こうしたメリットだらけのように思える認定医療法人制度ですが、デメリットはどういった点にあるでしょうか。


▶認定医療法人制度のデメリット                          


 まず第一点目として、持分なし医療法人への移行後6年間は、いわゆる認定8要件(下記参照)を充たし続けなければならないということが挙げられます。


○運営方法に関する要件

①法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと

②役員に対する報酬等が不当に高額にならないよう支給基準を定めていること

③株式会社等に対し、特別の利益を与えないこと

④遊休財産額が事業にかかる費用の額を超えないこと

⑤法令に違反する事実、帳簿書類の隠蔽等の事実その他公益に反する事実がないこと

○事業状況に関する要件

⑥社会保険診療等(介護、助産、予防接種含む)に係る収入金額が全収入金額の80%を超えること

⑦自費患者に対し請求する金額が、社会保険診療報酬と同一の基準によること

⑧医業収入が医業費用の150%以内であること

(厚労省資料より)


 6年間という時間の長さの感じ方は人によってそれぞれですが、持分なし医療法人へ移行したことに安心してその後の法人運営をおろそかにしてしまうと、せっかく免除されていた贈与税が復活し、医療法人が出資持分の放棄時点の時価相当分の経済的利益を受けたものとして納税する必要が生じてしまいます。

 また、これはあくまで「贈与税」ですので、その時その医療法人に法人税法上の繰越欠損金があっても相殺することが出来ません。想像しただけで恐ろしい事になりますので、6年間しっかり要件充足を確認しつつ、運営を行っていくということが非常に重要になります。

 第二点目のデメリットとして考えられるのが、「財産権たる出資持分を放棄して大丈夫か」という点にあるでしょう。一度持分を放棄して持分なし医療法人へ移行してしまうと、二度と持分あり医療法人へ戻れません。この点、もう二度と作れない「持分あり医療法人」という存在そのものに一定の価値があると考えることも出来ます。しかし出資持分はオーナーシップの源泉として考えておられる医療経営者の方は非常に多いので、今まで出資持分の大半を保有していた理事長先生が、持分なし医療法人においては、単なる一社員、一理事という存在になり、社員・理事になっている他のご家族の方が反対すれば、理事長の座から降りなければならない可能性が生じます(但し、これは持分あり医療法人でも同じ事が起こり得ます。出資持分に議決権が全く無い以上、制度上違いがあるわけでは無く、あくまで気持ちの問題になります。私が株を全部持っているのだという。やはり人間ですのでこの気持ちの問題が結構大きかったりします)。

 第三点目として、将来的にM&Aによる売却を考えられている場合、持分なし医療法人においては、その医療法人の価値を表象するものがないため、売り手の元オーナー家にとっては、基本的にはその対価を退職金等で抜くしかなく、この点は、持分あり医療法人の方がメリットがあると言えます。

 以上のようなメリット・デメリットある認定医療法人制度を活用した持分なし医療法人への移行ですが、地域医療の継続のため、医療法人を永続的に(同族で)経営して行きたいと考えられておられるようであれば、やはり持分なし医療法人に分があると思います。


▶今後の方向性について令和3年度税制改正大綱(令和2年12月閣議決定)より     


 先日閣議決定された令和3年度税制改正大綱でも、贈与税・相続税の一体化に触れられております。今後益々、評価額が巨額に上る出資持分を後継者へ無理なく移していく方法が限られる可能性が高くなるものと考えられます。

 また、いわゆる不妊治療にも保険が適用される方向で検討が進められているとのことですので、認定医療法人制度を活用して持分なし医療法人へ移行出来る医療法人が拡大する可能性もあります(ただし、役員報酬規制や医業収入が医業費用の150%以内の要件あるいは遊休財産額等で引っかかる可能性もあります)。

 従来からある手法としてMS法人を用いた相続対策がありますが、今後消費税の税率が益々高くなれば、医療法人の損税が更に増加することになり、全体としての税金コストがさらに高まってしまうという問題もあります。


 現在持分あり医療法人の経営者の皆様には、認定医療法人制度が延長されている間に、こうした様々な状況を踏まえながらご自身の医療法人を将来どうして行きたいか、将来の医療法人像をしっかりと考える必要があるでしょう。

 そうした皆様に我々が少しでもお役に立てたらと願いつつ、認定医療法人制度が令和5年といわず更に延長されることも願いつつ、なんとかこのコロナ禍を(使える制度は全てしっかり使って)乗り切って行きましょう。

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